1.院号について
2.院号の由来について
3.院号に関する規程について
4.院号は必要ですか
5.最後に
院号は必要?
現在、浄土真宗本願寺派では、宗門(しゆうもん)〔浄土真宗本願寺派全般〕の護持発展に功労(こうろう)があった方や、社会に対する功績が顕著であると認められた方に、本願寺派より授与されています。
院号は、過去、さまざまな意味を付与されてきた歴史を持ち、現在でも一部には、「院号」自体、世俗的権威や経済的価値を認めること、また、院号をお金で買うといったように、誤って認識されている実態があることも否定できません。
「院号」とは何か、「院号」は本当に必要か、そのことを考えてまいりましょう。
院号とは、もともと寺院〔住まいや場所〕の名称をもってそこに住む僧侶を呼ぶ風習が平安時代頃から起こったことに由来しています。
822年、嵯峨(さが)天皇(在職809~823年)が譲位し上皇(じようこう)となって出家して僧侶となった時、京都堀川西に嵯峨院を造営し移り住み、自ら嵯峨院と称するようになりました。
「院」というのは、「垣根をめぐらせた屋敷」を指す言葉で、元々は天皇の退位後の住まいの呼び名だったのです。つまり、「○○院」というのは、身分の高い人を名前で呼ばずに、住まいや場所の名称で呼称するという中国の風習からきたものです。
したがって本来、「院号」は、法名や戒名とは全く関係がなかったのです。
しかし、それが法名や戒名の上に置かれて、特別の位としての意味合いをもたせることが、後に一般化していきました。
10世紀終わり、藤原兼家(ふじわらのかねいえ)(生没929~990年。平安時代の公卿)が貴族で初めて、「法興院(ほうこういん)」と称しています。
天台宗においても平安時代の末頃に天台座主圓仁(えんにん)(生没794~864年)が「前唐院(ぜんとういん)」と称しています。
武士においては、室町幕府を開いた足利尊氏(あしかがたかうじ)(生没1358~1408年。室町幕府初代将軍。在職1338年~1358年)が「等持院殿(とうじいんでん)」と「院殿号(いんでんごう)」を称しています。このときの院殿号は、院号よりも一段低い意味を示すものでした。
のちに、足利(あしかが)義満(よしみつ)(生没1358~1408年。室町幕府第3代将軍。在職1368~1394年)が「鹿苑院(ろくおんいん)」と称するようになり、将軍などは常に「院」を称するようになっていきました。
このように、世俗の権力体制を補完するものとして、仏教が取り入れられたことにより、本来は出世間(しゆつせけん)を示すはずの法名や戒名が、その時代の権力体制を色濃く反映するものとなりました。
そうした中で、法名や戒名に「位(くらい)」としての院号というものがつけられるようになりました。
「院号」は、法名や戒名とは全く関係がありません
ちなみに、浄土真宗では、第8代目宗主 蓮如上人が「信証院」と称されたことに始まるとされています。
今では、院号というのが当たり前みたいになって、
家族(ご先祖さま)や親戚などで院号をつけておられる方がいれば、私にも院号があって然るべきみたいな状況になっています。
また、院号を特別に名付けることに、多額の金銭を要求する僧侶(お坊さんの方)もいると聞いております。
「院号」は貰うものでもなく、お金で買うものでもありません。名付ける側から贈らさせていただくものです。
なお、浄土真宗本願寺派に「院号」に関する規程がございます。
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【浄土真宗本願寺派「院号授与」に関する規程】
(院号授与の原則)
宗門の護持発展に貢献した者又は社会に対する功労が顕著であると認められた者に授与する。
院号は、浄土真宗本願寺派の総長が授与するものであって、これ以外は院号を用いることは出来ない。
(院号授与基準)
次に掲げる者を対象とし、本願寺派総長が授与する。
・所属する寺院の住職もしくは坊守としての在任年数が20年を超えた者
・所属する寺院の責任役員を通算して3期(12年)以上経歴した者
・所属する寺院の門徒総代を通算して5期(20年)以上経歴した者
・所属寺院および組および教区の護持発展に、上記と同等またはそれ以上の貢
献があった者
・所属する寺院の住職の申請により、本人もしくは親族その他の関係者が、浄
土真宗本願寺派本山本願寺に懇志を進納した場合において、総局が定める勧
励要項(かんれいようこう)に基づいて、本願寺派の総長が授与する。
(死亡による院号授与基準)
次に掲げる者が死亡した場合において、所属する寺院の住職の申請により、こ
れを本願寺派の総長が授与する。
・僧侶
・坊守
・所属する寺院の責任役員を通算して3期(12年)以上経歴した者
・所属する寺院の門徒総代を通算して5期(20年)以上経歴した者
・浄土真宗本願寺派本山本願寺の門徒総代及び参与
・直属寺院(例:本願寺○○別院)の責任役員、総代及び参与
・宗会議員
・その他、本願寺派に功労があったと認められる者
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と記されています。
つまり現在、お寺・住職(僧侶)は院号を付与することは出来ない、ということです。
お寺・住職(僧侶)は院号をつけてはならない
現在、お寺の方に院号をつけていただいておられる方は、お寺の方が、院号授与の原則に従っていないということになります。
院号があるから、位が高い。??
院号があるから、人よりもいいところに行ける。??
ご先祖さまがつけれおられるから。??
まわりの方がつけておられるから。??
心情的に院号をつければ、喜ばれます。
しかし、それが差別の温床につながるのではないでしょうか。
確かに、浄土真宗本願寺派にも院号授与に関する規程があり、条件を満たせば授与することが出来ます。院号を否定することは恐れ多いことです。
しかし、浄土真宗の御教え(みおしえ)は、みな平等に救われる教えです。
法名で十分すぎるほど十分だと思うのです。。。
以上、
この院号不要の考えは、一浄土真宗僧侶の考えです。他の僧侶(お坊さん)によっては、考え方が全く異なっているかも知れません。
そのことをご留意いただければ幸甚です。